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ハッスル通信

「俺ってやっぱり“プロレス”なんだなぁ、と思いました(笑)」
山口日昇ハッスル代表インタビュー

2010年6月8日

約半年間に渡る活動休止期間を経て、4・30『坂田“ハッスル”亘〜審判の日〜』(後楽園ホール)でふたたび再興に向けて走り出したハッスル。しかし、メインイベントで行われた注目の一番、山口日昇ハッスルエンターテインメント代表がリングに上がった一戦では、山口代表が試合中に右腕をスパイラル骨折する大ケガを負い、坂田“ハッスル”亘は中村カントク率いるBUSTLE軍(罰ッスル軍)に惨敗。まさに、現実の厳しさを映し出す結末に……。
続いて迎えた、5・30『坂田“ハッスル”亘〜第二章〜』(後楽園ホール)では、メインでタッグを組むはずだった中村カントクに裏切られ、またしても1vs3という不利な状況に立たされた坂田であったが、劇的な大逆転勝利を飾ってリベンジ達成。最後はファンと共にハッスルポーズで締めくくるという最高のハッピーエンドで、ハッスル再興に向けて本格的に走り出す形が見えた大会となった。
そんな中、手術を終えて現在リハビリ真っ最中の山口代表に、改めて激動の2ヵ月間を振り返ってもらい、今後のハッスルについての展望を聞いてみた。


「“前に出る気持ち”を見せるしかない」

――まずは、2大会を終えていかがでしたでしょうか?
山口 一言で言うと、やって良かったなっていうことですね。少しずつでも前に転がってはいるので、やって良かったなと。中身に関してはファンのみなさまの審判に任せるしかないですけどね。僕個人で言うと、4月大会で間抜けなことに右腕を骨折してしまったんですけど、直後に関係者やファンのみなさまから激励の電話やメール、ツイッターでつぶやきをもらって、非常にありがたかったです。本当にご心配・ご迷惑をおかけしました。現在は手術も無事成功してリハビリ中ですけど、骨の中には鉄の長い棒が1本入ってる状態。つまり、アイアンアームになったので、もう二度と折れることはありません! ……それはともかく(笑)、第一戦目というのは、僕のアクシデントも含めて、重たい終わり方になって申し訳なかったんですけど、第二戦目の5月大会は明るく前向きに終われたので、4月と5月をセットで観てくれたファンには、おぼろげながら意味合いは伝わったかなぁと思ってはいるんですけどね。
――意味合いというのは?
山口 第一戦目は本当にすべてをさらけ出すというか、置かれてる現状をそのままあぶり出すしかないというか、あぶり出されるというか、どんなに繕っても今回ばかりはリングに表れちゃうだろうなという気持ちがあったんですよ。亘の置かれている状況も、僕の置かれている状況も、ハッスルそのものの置かれている状況も、ハッキリ言うと、シビアだし四面楚歌状態だった。その状況下で明るく楽しいハッスル、いわゆるファイティング・オペラの方向に針を振ろうと思えば振れたのかもしれないけど、正直そこまでつくり上げる力がなかったんです。だから、ある意味“ナマ”。カッコ悪かろうが、笑われようが、現状の力でやれるところまでやってみて、あとはそれがどうリングに表れるか賭けるみたいな感じでしたね。
――でも、まさに現実世界を鏡写しにしたような状況でしたね(笑)。
山口 はい(笑)。僕の場合で言えば、四面楚歌の状況と、僕が怪物みたいな外国人選手3人に囲まれた状況がピタッとはまっちゃったというか(笑)。前に行っても横に行っても後ろに行っても道は塞がってる。でも、現状を突破しなきゃいけないし何かをやらなきゃいけないという中で、リングに上がって僕に何ができるかって言ったら……何もできないんですよ(笑)。
――まぁ、そうですよね(笑)。
山口 でも、僕があまりにもムキになってるもんだから、「何をしていいのかわからない加減も含めて、新弟子のデビュー戦みたいな気迫だった」ってあるレスラーに言われたんですよ。確かに気持ちだけは前に出る、前に出る気持ちだけは見せなきゃというところでした。だって何もできないもん! せめて気持ちだけは負けない! ……って、まぁ「お前はいったい何者なんだ!」っていう話なんだけどね(笑)。もちろん、賛否両論あるのもわかってはいるし、あれで禊が済んだとも思っていません。でも、亘も僕も、とにかくハッスルを再興させていくっていう思いを示そうよっていう結果が、ああいう結末になってしまった。だから、変な言い方だけど、僕が気持ちだけは前に出そうと思ってハネ返されて骨折したのも必然。亘が大の字にされたのも必然。そんな気がするんですよ。現実は気持ちだけでは厳しいですよね。
――チョップを打った際に、自ら骨折してしまったということなんですけど。
山口 実は、その前にイッてたんじゃないかなぁと、今思えば。場外のフェンス際で亘がジョー・メガロドンにやられてるときに“行かなきゃ”となぜか思ってしまって、右肩からメガロドンの背中に向かって突っ込んで行ったんですよ。チョップやキックや受け身のやり方も教わってないから、全身で突っ込んでやれと思って右肩から全力で当たっていったら、“ピキッ”と衝撃が走ったのは覚えてます。そのときにヒビかなんか入ってて、チョップを打ったときに“ビキッ!”と。で、そのあと、また後ろから抱えられて腕を捻られて止めを刺されたから、三段階でイッたんじゃないかと、いまだから分析できます(笑)。
――うわぁ!
山口 でも、チョップで自爆して折ったというほうがわかりやすくて面白いからいいんですけど。
――じゃあ、第一戦目のテーマは、現状をさらけ出す、そして前に出る気持ちを見せることだったと。
山口 今思えばですけどね。だから、第一戦であぶり出されたものがあったから、逆に第二戦目は、亘がコスチュームをショートタイツに替えたというのも含めて、できる限り前向きに明るく締めくくれるように持って行くことを、はっきりテーマにできた。第一戦目で現実の厳しさや壁を知ったからこそ、第二戦目でのテーマがハッキリしたというか。
――あのショートタイツは、大会3日前に坂田選手が長州力選手に挨拶をしに伺ったときに言われたんですよね。
山口 「(長州の声マネで)三角形履かないとダメだよ、坂田は、うん。三角形のパンツを履かなきゃダメだよ、ああ」って長州さんに言われたんですよ。当然、長州さんにインスパイアされたっていうのも含まれるんだけど、前から亘にはコスチュームを替えてくれっていうのは僕からもスタッフからも言ってたんですよ。これは長州さんも言ってたんだけど、やっぱりあれだけキレイな身体をしていて、それを隠してしまうのはもったいない。武器でもあり、美しさでもあるから。でも、亘の美意識には合わないみたいで、「イヤだ!」の繰り返しだったんですよ。
――最終的には、坂田選手を説得してコスチュームを替えてもらったと。
山口 まあ、あそこで長州さんに言われたのも天の声だと思って、大会当日に新しく作った青のショートタイツを控室にソッと置いておきました(笑)。レガースはたまたまジェット(若鷹ジェット信介)が管理していて、リングシューズはハッスル時代のシルバーのシューズがあったから、それに合わせてシルバーのフチ取りでタイツに“ハッスルMAN”という文字を入れておいたんですね。前日まで亘は「イヤだ!」の一点張りだったんですけど、大会当日、目の前に置いて、「あとはよろしくお願いします!」と。とにかく風景を変えたかったんですよ。亘にしても、今までのハッスルを守るのではなく、新しいハッスルを作るっていう意気込みがあるわけだし、本当に裸一貫で勝負するということを、ちっちゃなことではあるんだけど表現していかなきゃいけない。でも、「イヤだ!」と言いながら、亘もその意味は理解してたと思うんですよ。亘もこっちから頼むと「イヤだ!」と言うアマノジャクなところがあるから(笑)。最後は説得というんじゃなく、自ら履いてましたから。

「本当に“プロレスって何だろう?”って考えたからね(笑)」

――確かに、第二戦目のエンディングは、明るく楽しいハッスルという光景で締めくくれたと思います。
山口 亘も相当なプレッシャーがあったと思う。比喩的な言い方になるけど、サングラスを外して素顔になって、パンタロンを脱いでパンツ一丁になって、孤立しながらも本当の意味でハッスルを背負ってひとり立ち上がったわけだから。その思いがリアルだっていうことは、二戦やってファンに伝わったんじゃないかなぁと思うんですよ。大谷さんや越中さん、その他の選手にも伝わったと思うし。中村カントクにしても「素人をリングに上げるな」という批判はあるにせよ、あのジャーマンを受けたカントクはあっぱれですよ。「Please don’t try do this at home」を体現してたもんね。あれは、プロレスに人生を捧げてないとできないよ(笑)。でも、今こうして笑いながら振り返れるけど、4月の大会前は本当に四面楚歌だったからね。ノイローゼか鬱になるんじゃないかと思ったくらいで。
――昨年10月の活動休止前とはまた違った状況でしたか?
山口 別次元ですね。ハッスルがこうなってしまって、いまさら僕がこんなことを言うのもあれなんだけど、本当に「プロレスって何だろう?」って余裕がない中でも考えたからね(笑)。“ハッスル=芸能人プロレス”とか、“ハッスル=お笑い”とか、いろんな定義の仕方があるし、実際僕もハッスルは従来のプロレスとは違うと大きな声で言ってみたり、プロレスのタブーの部分を触ってきたけど、軸はやっぱりプロレスなんですよ。だから「プロレスって何だろう?」っていうのは、こういう状況になったからかもしれないけど凄く考えた。あと、話は逸れるけど、リングに上がったときに改めてわかったことがあって、プロレスラーのテンションっていうのは尋常じゃないよね(笑)。
――つまり、リングに上がったときのテンションということですよね。
山口 練習してるときのテンションっていうのは、100あるうちの5くらいだよね。あのテンションにまずビビッたから(笑)。だから、メガロドンを目の前にしたときなんかは、本当に「生きてこそ!」って思ったもんね。まあ、このときの気持ちをみんなに共有してもらおうっていうのはまったく思ってはいないんだけど、この経験を今後のイベントでどう活かしていくかっていうことなんじゃないかな……違う?(笑)。
――プロレスデビューを経験したことで、プロレスに対する考え方というのは以前と変わりましたか?
山口 いや、ハッキリ言っておくけど、あれはプロレスデビューじゃないから(笑)。でも、僕がリングに上がったときはファイティング・オペラではなく、プロレスの世界に放り出されたっていう感覚はありますよ。で、やっぱりプロレスって怖いけど面白いよね。凄まじく面白いジャンルだと思う。そのプロレスっていうのが世間を堂々と歩けるように、ハッスルはハッスルなりの角度でアプローチしてきたわけだけど、今後は違う角度からのアプローチもしていかないといけないなとは思っています。
――先ほどの新しいハッスルを作るという話に戻りますが、今後のハッスルはどういったビジョンで展開されていくのでしょうか?
山口 新しいかどうかは置いといて、まず、ファイティング・オペラにこだわる必要が無いのかなっていうのがひとつありますよね。プロレスの凄さや面白さを世間にどう伝えていくかっていうアプローチの仕方をこれまでと変えていくというか。今までは、インリン様だったり、和泉元彌さんだったり、泰葉さんだったり、有名人をリングに上げることで世間の注目を集めるというアプローチばかりが目立っていたんだけど、そればかりではなくて、動物園で例えるならアザラシにはアザラシの面白さがあるっていう方向もしっかりやっていかなきゃと思いますね。

「動物園とプロレスって、いろんな共通点があるのかなと」

――アザラシの面白さ?
山口 旭山動物園……北海道旭川市にある日本最北端の動物園って知ってる?
――北海道の有名な観光スポットになっている動物園ですよね。
山口 うん。有名なとこ。その動物園を経営的視点から見た『未来のスケッチ』という本を読んだんだけど、もともと旭山動物園は旭川市から予算をもらっていて、入園者減少が続いてジリ貧状態。で、いつ潰れるかわからないっていう状況からV字回復したんだよね。それで、さっきのアザラシの話に戻るんだけど、その旭山動物園は“スター動物”を置かない。パンダとかラッコとかね。で、あるとき、親子連れがアザラシの厩舎に来て、「なんだ、ただのアザラシか。ラッコじゃないんだ。つまんないね」って言いながら帰っていったんだって。その親子の会話を現園長が聞いて猛烈に腹が立ったらしくて、「あいつらはアザラシの面白さを知らない。今に見てろよ! 俺はただのアザラシの面白さを絶対に伝えてやる。」と思ったらしいんだよ(笑)。
――今に見てろよと(笑)。
山口 ただのアザラシの面白さを伝えることに情念を燃やして、「今に見てろよ!」と思える人がいることも素晴らしいんだけど(笑)、今のプロレス界の状況、そしてハッスルの状況というのもそうじゃないかなと。パンダやラッコみたいなスター動物を置くっていうのは、やろうと思えばできないわけじゃないんだよね。でも、その半面、ただのアザラシの面白さを伝え切っていないという部もある。アザラシというのは水中に飛び込んだときが一番面白いらしいんだけど、その面白さを伝えるために水槽を透明にしてお客さんにも見えるようにしたりとかね。行動展示っていうらしいんだけど、その動物の面白さを引き出す形の展示の仕方にしていったらしいんですよ。だから動物園とプロレスって、ある意味で共通点があるのかなと。プロレスラーを「ただのアザラシ」扱いするのかって突っ込まれるかもしれないけど、そういう意味じゃなくてね。
――つまり、見せ方ひとつで本来持ってる面白さや魅力を伝えることができると。
山口 プロレスにもまだまだ活かしきれていない素材はいっぱいいると思うんだよね。リング上での闘いはもちろんだし、プロレスラーの普段の生態なんかを見せただけでも絶対に面白いからね。プロレスラーの飲み会をUstreamで生配信したら、絶対に面白いでしょ(笑)。だから、ラッコだとか、立ち上がるレッサーパンダとか、そういうものを持ってきたり、動物園に遊園地を併設して人を集めるっていうのも大事なんだけど、動物には本来持ってる面白さや魅力、凄さ、尊さがあるわけで、それをどう伝えていくのかっていうのが重要だと思うんですよ。これは各団体がやってることだとは思うんだけど、ハッスルなりのやり方で見せていきたい。追々発表していこうと思いますけど、いろんなプランがあります。そういうことを考えたりしてるときに、あ、俺ってやっぱり“プロレス”なんだなと思いました(笑)。
――そこに行き着いたわけですね(笑)。それで、気になる今後の具体的な予定というのはいかがでしょうか?
山口 近日中(取材日は6月4日)に記者会見で発表しますけど、またいつか後楽園ホールに戻って来たいとは思ってます。その前に、5月大会でジェットが発表したハッスル初のスピンオフ企画をジェットのプロデュースという形で7月10日に西調布アリーナでやったり、小さくても面白い企画がいっぱいありますね。坂田“ハッスル”亘興行だけではなく、いろんなイベントを仕掛けて、ひとつの集合体を作っていきたいなと。こういうことを言うとまた怒られるかもしれないけど、失敗を恐れず転がっていきたいですね。もちろん、現実問題として「明日のバス代どうしよう……」「迷惑をかけた方々に早くなんとかお返ししなきゃ」とか問題は山積みなんだけど。でも、そういう現実に押し潰されそうになりながらも、やりたいことや新しいアイデアがどんどん出てくるようになったんですよ。二大会を終えて。
――皮肉にも(笑)。
山口 こんなことを言うと「それよりも現実を見ろ」ってみんなに怒られるかもしれないから、あんまり言いたくないんだけど、ドン底のときほど夢を見ないといけないなっていうのは実感してますね。夢というかビジョンを描かないと。
――それでは最後にファンに向けてメッセージをお願いします!
山口 メッセージ? う〜ん……………………生きる!
――生きる!(笑)。
山口 僕もハッスルも絶対に生きます! 今後ともよろしくお願いします!

関連大会:坂田“ハッスル”亘〜第二章〜坂田“ハッスル”亘〜審判の日〜