ファイトカード

高田総統劇場

 「おい、コノヤロー! あさってはタダじゃ済まさねぇぞ!」タイガー・ジェット・シンとアン・ジョー之助を追い払い、リングに上がった小川は猛然と吠えた。しかし、そこにあのお方の声が…。

 「チキン君、名古屋で痛い目にあうのはキミのほうじゃないのかね?」高田総統のテーマ曲が流れ、いつものようにバルコニーからスモークがもくもくとあがる。高田総統の登場だ。しかし、この日の小川の行動は素早かった。

 「ちょっと待て! 今からそっちへ行くから待ってろコノヤロー!」と、ダッシュでバルコニーへ向かったのである。今日こそ高田総統を捕獲し、とっちめる作戦だ。

 ところが、ここでビッグサプライズ! なんと、総統は花道からリング上に姿を現したのである。バルコニーに到着した小川を見て、「おい、チキン君。キミはそんな所でなにをやってるんだ?」と、あざ笑う。「てめぇ! 騙しやがったな、コノヤロー!」と怒りを爆発させる小川だったが、もはや後の祭りだった。総統はもう小川の手の届かないリング上にいるのである。

 「おい、チキン君。キミは予定外の事が起こるとパニックになるクセがあるな。単細胞のチキン君」とからかい、「秋の夜長に相も変わらず、暇でヒマでしょうがない、何の予定もないプロレスファンの諸君。いや、下々の諸君と言わせてもらおう」とその矛先はファンに向いた。すかさずブーイングが沸き起こるが、高田総統にとってブーイングは賞賛にしか聞こえない。「行儀がよくなったじゃないか」と笑い、「我こそが高田モンスター軍総統・高田だ!」と名乗った。

 「暇なのはお前だろう! いいか、あさっての名古屋で俺が勝ったら、リングに上がれ! 今度こそ化けの皮を剥がしてやる!」と、またしても高田総統との一騎打ちを望む小川。しかし、高田総統はそんな事を意にも介さない。

 「キミはまだ、タイガー・ジェット・シンの本当の怖さを分かってないようだな。確かにキミは怖いもの知らずで、この私ですらビビってたじろぐほどだよ」と意外な告白。高田総統をビビってたじろがした小川の行動とは? 「あのしょっぱい歌を公共の電波で流す勇気は私にはない。もし私が君の立場だったら、死んだほうがマシだ」と、小川の『ハッスル音頭』でのNHK出演を揶揄したのである。やはり、高田総統が褒めるなんて事はない。

 「これがポイントだ! ハッスルしてても歌が下手なら皆同じ。ハッスルしてもプロレスがヘタなら皆同じだ!」と、徹底的に小川を小ばかにする。

 「もうひとつ、言っておこう。キミはまだプロレスラーじゃない。エセ・プロレスラーだ! しかし、キミのような男にも優しさを持つ私が、キミにプロレスの怖さをタップリと教えてあげよう」と、名古屋へ向けて不気味な予告を行った。

 これに対し、小川は「あさって俺が勝ったら、リングに上がって俺と闘え!」と対戦をアピールしたが、背後からモンスター軍が急襲! シルバらが小川を抑え込み、島田参謀長がなんと催眠スプレーを吹きかける! 意識を失った小川は頭から麻布の袋をすっぽりと被せられ、そのままモンスター軍に拉致されてしまった! どうなる、名古屋!?

 場内には高田総統の勝ち誇った笑い声が響き渡る。「敵も察知できない、緊張感のないしょっぱいあの男がタイガー・ジェット・シンに勝てるのか?」とあざ笑い、ファンへ向かって「もうしばらく聞いてもらおう! 邪魔もいなくなったし、私の独壇場だ! 下々の諸君は、私を見に来ているんだろう? あと1時間喋らせてもらう!」と宣言。

 「チキン君に言っておこう。あさっての名古屋でキミは人生で一番素敵な事を体験するだろう。そしてだ、緊張感のないチキンだけではない! 肩が痛い、尻が痛いと泣き言ばかりを言っているとんかつ! いや、とんこつでポンコツのポーク君もな。それに、ひきこもり! 黒パンツのロートル! キミたちは最近、アルバイトに精を出しているらしいな。キミたちにもひとこと言っておこう。今風に言うと、フリーターというやつだ。長州君、キミは一体、何をやりたいんだ!」と、最近何かと話題の長州力へ向かって、相変わらず嫌味を言う高田総統。

 しかし、ここで「長州コール」が起こった。ハッスル・サポーターたちは、長州に負けてほしくないのだ。だが、高田総統はそんなファンたちの気持ちを逆なでするように、「彼は今、アルバイト中だ!」と一喝。

 「最後になるが、聞いてもらおう」と高田総統。あれっ、さっきは今日は1時間は喋るって言ったじゃないか。場内からは高田総統の言葉を信じていたファンから、不満の声が漏れる。

 「モンスターパークにも、時間の都合があるんだよ」と、またしても高田総統は一喝。まったくもって、自己中心的な総統である。

 「あんまり喋ると、新鮮味がなくなるだろう?」と、高田総統なりに考えているらしい。

 「ところでだ! 今日は我がモンスター軍が勝った暁には、下々の諸君を洗脳すると約束したな。どうだ、ビターンで洗脳されたいか!」と問いかける高田総統に、ビターンの恐ろしさを知らないハッスル・サポーターたちはヤンヤの喝采。さっきまでハッスル軍を応援していたのに…。そんなファンへ向かって高田総統はひとこと、「お前らは、風見鶏だ!」的確である。

 ここでアン・ジョー司令長官から、説明があった。「高田総統の、ブレイン・ウオッシュ、洗脳を受けたい人は立ってクダサイ。これからやるのは、3、2、1、ビターン、ビターンでーす」と、まず片手で指差し、次いで両手で指差すビターンポーズを指南。「それでは、本番は高田総統にお願いシマース」とバトンタッチした。

 しかし、高田総統。ひとこと言わずにはいられない。「お前ら、立ちすぎだよ。予想外だ!」と、ハッスル・サポーターたちの風見鶏ぶりに呆れ顔だ。

 「せいぜい私の洗脳を受けてくれたまえ。3、2、…」とカウントしたところで、先走ってしまう下々の諸君。「(カウントが)早すぎる!」と高田総統からダメ出しを受けてしまった。ここでもう一度、アン・ジョー司令長官が、やり方を説明。「低脳なキミたちも、これで覚えましたか?」と確認するが、ブーイングが待っていた。

 そして、高田総統の掛け声で史上初の「3、2、1、ビターン!ビターン!」。すっかり洗脳されてしまった超満員のハッスル・サポーターたちは、「3、2、1、ハッスル!ハッスル!」をやる事なく、家路についてしまった。亀裂も噂されるハッスル軍、そして風見鶏ぶりを露呈したハッスル・サポーターたち。これで大丈夫なのか、ハッスル!

第5ハッスル

3分36秒 コブラクロウ→体固め

 『ハッスル6』身代わり髪切りデスマッチでの出場が決まっている坂田亘にとっては前哨戦となるこの試合。是非とも勝って勢いを付けておきたいところだ。藤井軍鶏侍の後、ゆっくりとリングに上がった坂田は持ってきたタオルを客席に投げ込むパフォーマンスで会場を沸かせた。

 会場のスクリーンには困った表情の島田参謀長とアン・ジョー司令長官の姿が。どうやらタイガー・ジェット・シンが全く言う事を聞かないという。するとそこに高田総統が現れてアン・ジョー司令長官にビターン! 新たに変身したアン・ジョー司令長官の姿を見て「これなら大丈夫ですね」とうなずく島田参謀長。果たしてアン・ジョー司令長官は何に生まれ変わったのか? 会場にタイガー・ジェット・シンの不気味なテーマ曲が流れ始める。この時はまだ誰もリング上であんな凄惨な光景が繰り広げられるとは予想だにしていなかった…。

閉じる 花道に現れたアン・ジョー司令長官は金髪に竹刀を手に持っている。上田馬之助ならぬアン・ジョー之助の登場だ。サーベルを手にしたシンは全盛期と変わらぬ暴れっぷり。いきなり客席に乱入し、パイプ椅子を蹴散らすと、ほうきやゴミ箱を持って大暴れ。身の危険を感じた観客が通路の外まで逃げ惑うという異常事態にまで発展した。2人の暴走はリングに上がっても変わらない。リング内ではアン・ジョー之助が坂田を竹刀でメッタ打ちにし、さらにその竹刀でノド仏を押さえつけてチョークを繰り返す。シンはシンで場外の軍鶏侍をパイプ椅子で容赦なく攻撃。軍鶏侍の額からはおびただしい出血が見られる。そしてなんとそのパイプ椅子を倒れこんだ軍鶏侍に向かって投げつけたのだ! もはや客はその残虐ファイトに怖がるというよりも引いてしまっている。しかしそれをあざ笑うかのようにシンは配線コードを使って軍鶏侍の首を締め上げるのだった。

 リング内では坂田をコーナーに押し付けて思いっきり首を締めるアン・ジョー之助。レフェリーの制止もお構いなしだ。するとここでシンもようやくリングイン。全身が軍鶏侍の返り血で真っ赤に染まっており不気味さは倍増だ。タイツに隠していた凶器を取り出して坂田の顔面を殴りつけたシンが坂田を場外へ蹴落とすと、アン・ジョー之助はリング下でぐったりとしている軍鶏侍を無理矢理リングに上げる。それを見たシンはニヤリと舌なめずり。軍鶏侍の首根っこを掴み、そのまま強引に押し倒すように3カウントを奪った。

 試合終了のゴングが鳴ってもシンに攻撃を止める気配は感じられない。軍鶏侍を救出しようとリングになだれ込むヤングハッスルたちをアン・ジョー之助と2人で蹴散らす。もはや無法地帯とかしたリング。誰もこの2人の暴走を止めることは出来ないのか?

 すると場内には小川直也のテーマ曲が! 客席から現れた小川はファンにもみくちゃにされながらもリングに向かって一直線。しかも愛弟子・軍鶏侍がやられたとあっていつも以上に怒り心頭だ。慌ててリングを降りたシンとアン・ジョー之助を花道の奥まで追いかけていったのだった。


第4ハッスル

11分16秒 サムソン・クラッチ→エビ固め

 「あれ〜おかしいな」と携帯電話をいじる島田参謀長。高田総統はそれを見て、「おい、何をしている島田。試合中だぞ」と注意するが、島田参謀長は「ハッスルの携帯サイトがオープンしたので、それを見ようと思っているんですが、なぜか繋がらないんです」と言う。

 呆れ顔の高田総統は、「そんな事より、次の試合はどうなっている?」と仕事を即す。島田参謀長は、「ハッスル軍はインディーあがりのどうしようもないヤツらばかりですよ! それに比べて、こっちは精鋭ぞろいですから。なあ、みんな!」と得意げだ。

 そのバックには気勢をあげるコールマン、ボビッシュ、シルバの姿が。すると、その横に携帯のアンテナマークが! よく見ると、3人の背が段々になっていて、アンテナが3本立っている!

 「繋がりましたよ、総統!」と、喜ぶ島田であった。

閉じる モンスター軍が入場してくると、ハッスル軍が一斉に襲い掛かる! いきなり全員での場外大乱闘だ。しかし、パワーファイター揃いのモンスター軍があっという間に攻勢となり、ハッスル軍は蹴散らされる。黒田と田中は2人がかりのタックルを仕掛けるが、コールマンのダブル・ラリアットで吹き飛ばされ、シルバは観客席になだれ込み金村とセコンドを抱え上げて花道に叩きつける。ボビッシュも黒田をフェンスに叩きつけるなど大暴れ。パワーの差を見せ付けるように、モンスター軍が優勢だ。

 最初にリングに上がったのはシルバだったが、それはリング下の机に寝かせた金村に、コーナーポストからのジャイアント・ボディプレスを見舞うためだった。机は真っ二つ! 両軍セコンドも入り乱れての大乱闘が続き、ボビッシュが流血。やっとボビッシュと黒田がリングに上がるが、リング内でモンスター軍のパワーが炸裂だ。

 ボビッシュは黒田にスープレックスからエルボードロップ、コールマンもラリアットとフロント・スープレックスを見舞う。シルバは人間エグゾセミサイルのキック。

 しかし、ハッスル軍も負けてはいない。金村と田中がコールマンをダブル・ブレンバスターで叩きつけ、田中がコーナーポストからのスーパーフライ。そしてエルボーを見舞うがカウントは2。それでも黒田と田中は、出てきたシルバにダブルの攻撃を仕掛けようとしたが、これはシルバのダブル・ラリアットで吹っ飛ばされた。シルバは代わって出てきた金村を、ワンハンドのネックハンギング・ツリーで持ち上げると、そのままマットに叩きつけ、ボビッシュはその間に残りの2人を場外へ蹴散らす。

 もはや虫の息の金村。タッチを受けて出てきたコールマンは、余裕しゃくしゃくで金村のバックへ回り、ジャーマン・スープレックスの体勢に入る。しかし、ここで油断は禁物だった。金村はそのまま前方へ回転、コールマンをクルッと丸め込み、3カウントを奪ってしまった! 唖然とするコールマン。余裕を見せすぎたのが失敗だった。勝利を収めた中村カントクは、「頭が違うんだよ、頭が!」と得意げに引き上げて行った。

 シルバとボビッシュもこの失態に怒ったのか、さっさと引き上げてしまい、リング上にはまだ呆然としているコールマンだけが取り残されていた。


第3ハッスル

8分15秒 ラ・マシストラル

 ハッスル星から新たなヒーローが見参! 名古屋で行われる『ハッスル6』を前に一族の中でも最も名古屋を愛するというハッスル仮面きん&ぎんがハッスルハウスのリングに登場する。小柄だったレッドとブルーとは対照的にきんとぎんは大柄なヘビー級ファイターだ。高田総統が連れてきたというエル・ハテナウノ(I)&ドス(II)。出身地・正体、何もかものが謎のウノとドスは全身黄色のタイツにいたるところに「?」マークという不気味ないでたち。さらに「?」の形をした杖を手にゆっくりとリングに上がった。

閉じる 先にリングに上がったのはぎん。それを見届けてからリングに入ったドスは何やらウノと耳打ち。のっけから怪しさ爆発である。しかしファーストコンタクトは以外にもオーソドックスな攻防から始まった。バックを取り合い、腕を極め合うなど、見応えのある展開が続く。先にチャンスを掴んだのはドス。ラリアットでぎんをマットに叩きつけると、すかさずウノがリングイン。2人掛りででぎんを持ち上げて投げようとするのが、なぜかモタついてしまい、簡単にぎんに逃げられてしまう。

 ここでタッチを受けたきんはウノをロープに振ってまずはパワースラム。しかしすぐにウノもスイング式のDDTできんの追撃を振り切ると、今度はドスがリングイン。きんをコーナーに貼り付けにすると、顔面にキック! …すると思いきやスライディングでそのまま場外まで出て、きんの足を持って股間をコーナーポストに打ち付けるというえげつない攻撃に出る。さすが高田総統自らが発掘してきたモンスターだ。

 なんとか立ち上がったきんはドスに延髄蹴りからフォールを狙うが、それを持って来た杖を使ってカットするウノ。たまらず、ぎんがリングに入るも再び合体攻撃の餌食になってしまう。今度は下からぎんの足首を掴んだドス。ウノがぎんの上半身に逆水平を打つのに合わせてマットに叩きつける。さらに強引にウノの体を立たせると、ウノがトップロープからムーンサルト。ウノ&ドス組がコンビネーションの良さを見せて、きん&ぎん組を追い詰めていく。

 しかし最初は攻めさせておいて最後に逆転するのがハッスル仮面の得意技。思い起こせばレッド&ブルーの勝ち星はすべて逆転勝ちだ。ここできんとぎんは2人同時の延髄蹴りでウノとドスにカウンターを決めると、まずはきんがウノをボディスラム。続けざまにドスをキックで迎撃する。その隙にトップロープへ上がったぎんは2人並んでマットに横たわるウノ&ドス組にまとめてボディプレス! ぎんの上にさらにきんが覆いかぶさってフォールを狙う。これはカウント2で返されたものの、すぐに2人同時にフランケンシュタイナーを決めると、場外に落ちたドスに向かってぎんがブランチャー。リング内のきんにすべてを託す形となった。

 リング上で完全に1対1となったきんとウノ。勢い良くロープに飛んでウノに攻撃を加えようとした矢先、場外のドスが杖できんの足を引っ掛けるという姑息な技できんの動きを止める。そのドスもすかさずリングに上がり、2人がかりできんに襲い掛かっていった。

 しかしここはきんの方が一枚上手だった。ドスをコーナーに投げると、後ろから突進してくるウノをスライディングで足を引っ掛けて自爆させる。そして素早くウノの体を高々と持ち上げて顔面からマットに叩きつけると、ラ・マヒストラルで素早く丸め込んで3カウントを奪った。

 レッド&ブルーのような華麗な空中殺法は見られなかったものの、きっちりとハッスル軍に勝ち星をもたらしたきん&ぎん。まだ対戦相手が決まっていない『ハッスル6』だが、きっと活躍してくれることだろう。


第2ハッスル

11分37秒 レッグブリーカー→片エビ固め

 「カントク、お待たせ! Mr.USAが到着しましたよ」と、ニコニコとしてMr.USAを紹介する小川。しかし、中村カントクの表情はさえない。どうやら、Mr.USAの実力に不安を持っているようだ。

 「キャプテン、この男は本当にハルク・ホーガンの弟子なんでしょうね? この前のジュードー・オーはダメだったからなぁ…」と、前回のハッスルでホーガンの推薦選手として来日したジュードー・オーにダメ出しをする中村カントク。この言葉に不満そうな小川だが、1枚の写真を取り出す。

 「ほら、見てくださいよ。ちゃんとホーガンと写ってるでしょう」と写真を見せる。顔は小川の親指で隠されているが、ホーガンと握手しているのはどうやらUSAらしい。

 「そうですか? でも、確かに強そうだな」と改めてUSAを見直すカントク。「じゃあ、よろしくお願いしますよ」と握手を求めたカントクだが、USAはそれを突っぱねる。

 「さすが、“ハッスル・ゴッド”ホーガンの弟子だなぁ!」と嬉しそうな小川。USAはホーガンばりのマッスルポージングだ。「それじゃ、いってみよう!」という小川の掛け声に合わせて、3人は「3、2、1、イッチバーン!」

 一方、高田総統の司令室。アン・ジョー司令長官が、慌てて総統の元に駆けつける。「総統、ミーの情報によれば、チキンが連れて来たのはハルク・ホーガンの弟子らしいです」と報告。島田参謀長も「相手はけっこう強そうですよ」と動揺を隠せない。

 しかし、高田総統はピシャリと言った。

 「慌てるな、島田。あの早い、弱い、しょっぱいのチキン君が連れてきた選手だ。どうせ見掛け倒しに違いない。我がモンスター軍の恐ろしさをたっぷりと思い知らせてやろう。マスクド・バルバロッサ、ロシアン54! チキン君が連れてきた男をぶちのめして、化けの皮を剥がしてくるがよい!」

閉じる 場内に、あのハルク・ホーガンのテーマが流れた。USAはホーガンばりにギターを弾く素振りで入場、さらにホーガン直伝のポーズで観客にアピールする。それは、ゴングが鳴ってもしばらく続いた。これに対し、バルバロッサもマッスルポーズで応戦するが、USAのポーズに威嚇される。

 やっとゴング。先発のコリノに「コリノコール」が起こる。バルバロッサは先制のドロップキックを見舞うと、コリノを場外へ投げ飛ばす。リングに戻ったコリノは、バルバロッサのラリアットをかわして、パンチからがら空きの股間へキック一発! 悶絶するバルバロッサはロシアン54にタッチする。

 ロシアン54はロシア語で何事かわめくと、唾を吐き捨てる。ここで巻き起こる「USAコール」。コリノがタッチして、USAの登場だ。あまりのUSAコールに、ロシアン54は「ロシア! ロシア!!」とコールを要求するが、返って来たのはブーイングだけだった。USAは何度もUSAコールを煽るが、どうやらお客さんも飽きてきた様子。仕方なく、USAはロシアン54と組み合う。USAがロープに飛んで、ショルダーアタックを仕掛けるが、ロシアン54はびくともしない。それならばと、USAはラリアットをかわされるとフライング・ショルダーアタックだ。そしてボディスラムからフォールに入るが、もっと見たいお客さんから「え〜っ?」と不評を買ってしまった。

 タッチされたコリノがDDTを決めると、バルバロッサにタッチ。バルバロッサはコリノのロープエスケープを無視して、アームロックで締め上げる。コリノを場外へ投げ捨てると、USAを挑発する。

 バルバロッサは、なんとトップロープを新崎人生ばりに歩いて見せ、そこからエルボーを見舞う。代わったロシアン54は「ロシアン!」の掛け声と共に必殺の腕十字を仕掛けるが、USAがカット。USAはモンスター軍の2人をボディスラムで投げると、掛け声と共に「アックスボンバー!」。しかし、カウントは2。タッチされたコリノは、例によってものまね技のオンパレード。DDT、STOを繰り出し、「ハッスル、ハッスル!」。そして何と、ちょっとうつむきかげんになって腕を振り回し始めた。そう、新ネタのリキ・ラリアットである! すかさず場内からは、「長州コール」が沸き起こる。

 ところが、これはかわされてロシアン54はバルバロッサにタッチ。バルバロッサは必殺のパイレーツボムを見舞おうとコリノを抱え上げるが、コリノはクルッと肩口から脱出。もう一度腕をクルクルと回してリキ・ラリアットを見舞おうとするが、まだモノにしてないせいか、バルバロッサのベアハッグバスターで逆襲される。そして、もう一度パイレーツボム! これを何とか返したコリノだったが、続くレッグブリーカーでついにフォールを許してしまった。

 激しく睨み合うUSAとロシアン54。やはり両国の冷戦はまだ終わっていないのか。USAはコリノを誘ってマッスルポーズを決めようとするが、コリノは乗ってこない。それならと1人で四方へ向かってマッスルポーズを決めるUSAだったが、あまり活躍しなかったUSAに対するお客さんの反応は冷え切っていた…。


第1ハッスル

9分29秒 ムーンサルトプレス→片エビ固め

 今日のエンディングを賭けて始まったハッスル軍VS高田モンスター軍の5対5対抗戦。第1試合にはおなじみレオナルド・スパンキーが登場。今日はカズ・ハヤシではなく、日高郁人とタッグを結成だ。対するモンスター軍からはハッスル5に引き続いての登場となるスペル・ウイルスと初登場のアメージング・レッド。果たしてどんな試合となるのか?

閉じる 先発はスパンキーとレッド。4人の中で最も小柄なレッドだけにスパンキーはパワーをフルに生かして、ヘッドロックやロープに振ってのショルダーアタックで攻め立てる。ここで両者タッチ。レッドよりも一回り体がデカく一番大柄のウイルスはテーピングしている日高の肩を集中攻撃。日高の体を持ち上げてサイドバスターで叩きつける。さらに日高を場外に投げ捨てようとするが、ここで日高はロープを掴んで後転するようにウイルスの頭を足で挟むとフランケン・シュタイナー! 身軽さを生かした効果的な攻撃だ。

 そしてたまらず場外に逃げたウイルスに日高がダイブ! それに続けとスパンキーもボディプレスを慣行する。すると今度はレッドがトップロープからプランチャー。試合は一気に場外戦の様相をていしてきた。ここで力を発揮したのはウイルス。スパンキーの髪の毛を掴んで客席の中まで引きずり回すと、なんと客席のど真ん中でムーンサルトを決める! さらにスパンキーをリングに戻すと今度は一転ロメロスペシャルと器用な一面を覗かせる。しかしここで日高が絶妙のカット。レッドを利用してスイング式のDDTを決めるなど、頭脳プレイで対抗する。

 しかしそれを打ち砕いたのはやはりウイルスのパワーだった。強烈なドロップキックで攻撃を遮断してしまう。さらにそのアシストを受けたレッドもスパンキーの背中に飛び付いてそのまま回転してフォールするなど動きが良くなっていく。トップロープから日高をブレーンバスターで投げ捨てるレッドごとウイルスがパワーボム! すかさず救出に入ろうとトップロープに上がったスパンキーだがレッドにロープを揺すられて何とコーナーに股間を打ち付けてしまう。

 ウイルスは悶絶するスパンキーを高々と持ち上げると両腕をロックして高角度のパワーボム。すぐに起き上がると大の字のスパンキーにトップロープからボディプレス、そして“これでトドメだ”と言わんばかりにダメ押しのムーンサルトを決めてスパンキーから3カウントを奪った。その巨体を生かしたパワー殺法と身軽な動きも兼ね備えたウイルスに会場からは何と拍手が! モンスター軍でありながらファンのハートをガッチリと掴んだのであった。一方、スパンキーはイケメンキャラにも関わらず股間を強打し悶絶してしまうなど踏んだり蹴ったり。股間を押さえて静かにリングを降りる後姿がウイルスとは対照的だった。


オープニング・ハッスル

●モンスター軍作戦会議

 モニターには「わくわくモンスターランド」の開催に上機嫌な高田総統の姿が映し出された。そのご機嫌を損ねるような、島田参謀長のだみ声が響き渡る。

 「総統、今回のハッスル・ハウスもモンスター軍の大勝ちですよ。そして次は名古屋ですね。名古屋にはおいしいものがいっぱいあるし、その後はもみパブで“ドゥ・ザ・ハッスル”ですよ!」

 何と場の空気が読めない男だろうか。案の定、高田総統の怒りを買ってしまった。

 「島田、我がモンスター軍は、前回のハッスル5でハッスル軍に負けているのだぞ」

 そこへ、モンスターたちを引き連れたアン・ジョー司令長官が姿を現す。

 「そうデース! 前回のミスは300%ユーのせいデース」

 動揺する島田参謀長。そこへ追い討ちをかけるように、総統が島田参謀長のアゴを掴みながら語りかける。

 「島田、またお仕置きされたいのか? 何も名古屋まで待つ必要はない。今回のハッスル・ハウスでバラバラのハッスル軍を潰してもいいんだ!」

 分かりました、と島田参謀長。高田総統はなおも続ける。もちろん、カメラ目線でだ。

 「今回のモンスターホールでハッスル軍を壊滅させてやる!」と宣言、そして脇を閉じたり開けたりして腕をパタパタさせる、わくわくポーズを決める。何とも可愛いらしい。モンスター軍も全員揃って、“わくわく”。

●笹原GM登場!

 場内が暗転し、リング上にピンスポットが当たる。そこに浮かび上がったのは、ラメラメ・ジャケットを着たGM笹原…じゃなく、GMジャケットを無断借用し、Tバックの上に羽織ったジョーサンだった!

 「本日は…」と白々しく挨拶を始めるジョーサンに、GM笹原が食ってかかる。「何をしてるんだ、アンタ! 脱ぎなさい」と栄光のGMジャケットを脱がせる。哀れ、Tバック一丁になったジョーサンは何事かGMに語りかけるが、GMは「無理、ムリ」の一点張り。ジョーサンは諦めて、悲しそうに客席へ手を振って去ったのであった。GMの説明によれば、「俺をハッスルに雇いなさいと、訳の分からない事を言ってました」。どうやらハッスル出場を懇願していたらしい。

 気を取り直したGMは、颯爽と右拳を高々と上げ、「私は今、ハッスルのリングのど真ん中にいます!」と、どこかで見たようなポーズとセリフ。さらに、「そしてハッスルは、プロレス界のど真ん中に立ちます!」と宣言した。おかげさまでハッスル・ハウスは今回で3回目、「これからも私たちは、命がけでプロレス界を“わくわく”させていきます」と、やはり腕をパタパタさせてわくわくポーズを決めた。そして、ここで重大発表が!

 「12月23、24日の2日間、ここ後楽園ホールで『ハッスル・ハウス クリスマススペシャル(仮)』の開催が正式に決定致しました」

 クリスマスもハッスルだ!

 期待に胸膨らむファンの前に、またもナイスなムードをぶち壊すだみ声が響き渡る。島田参謀長がやどかりTシャツを着て登場だ!

 「みなさん、ドゥ・ザ・ハッスルしてますかーーっ!」もちろん、ファンはこの問いかけにブーイングで応えた。それにもめげない、島田参謀長。

 「GM、最近、顔が疲れてるんじゃないですか? そんなGMに高田総統をイメージキャラクターにしたハッスルドリンクを差し入れです。疲れが吹っ飛びますよ!」と、本日会場で先行発売しているハッスルドリンクを渡そうとするが、GMは当然、受け取らない。それならばと、島田参謀長は自分が一気飲みしてみせる。「GMには後で1ダースほど送らせていただきますよ」と、ハッスルドリンクのPRも出来て満足げな島田参謀長。GMはそっぽを向いて全く見ていなかったというのに。

 ところで、と島田参謀長。「昨夜、レイトショーでGMが出演している『まいっちんぐマチコ先生』を見てきました!」という。この男、どんな手を尽くしてもGMに取り入られるつもりである。それとも、単なるヒマ人なのか?「もう、素晴らしい演技の連続です。今日はその映像を持ってきたので、皆さんに見ていただきましょう」。という事で、映画『まいっちんぐマチコ先生』に出演するGMの名シーンが映し出される。場内はあまりの感動なのか、シーンと静まり返った。

 「どうですか、GMのこの演技! 私は涙が止まりませんよ。間違いなく、ハリウッドは目前です!」と白々しいヨイショを続ける島田参謀長。しかし、心なしかまんざらでもない様子のGM。どうやら気分は悪くないようだ。

 それを見て取った島田参謀長は、GMに新たな提案を行った。
「今回は対抗戦ですが、何かが欠けてます。何かを賭けてやりましょう! 私から提案があります。いつもハッスル軍のヤツらが最後に下品なハッスルポーズをやっているので、今回モンスター軍が勝ったら“高田総統の洗脳タイム”をやりたいです! ここに来てるバカ共に、高田総統の本当の素晴らしさを分からせたいんですよ」

 なにっ!? 試合終了後、恒例の「3、2、1、ハッスル!ハッスル!」を中止にするだと! これはとんでもない事になった。超満員のお客さんは、それを楽しみに来ているというのに。さすがモンスター軍、ワルである。そんな暴挙は許せんと、中村カントクの登場だ!

 「おいっす!」と現れた中村カントク、「お客さんはハッスルポーズをやりにきてんだぞ」と島田参謀長の野望を阻止にかかる。すかさず島田も、「もうみんな、ハッスルポーズなんて飽きてんだよ!」とやり返す。すると中村カントクは「なに言ってんだ! あの上戸彩だってハッスルポーズやってんだぞ! お前の家にはTVがないのか」となぜか説得力のある言葉。いいぞ、カントク!その調子!

 形勢不利となった島田参謀長は、話題を変えて「それより、あさっての名古屋で丸坊主になる覚悟は出来ているのか? 丸坊主になる練習はしているのか? 今日はお前の坊主姿を作ってきたからな」と、勝手に合成した中村カントクのボーズ頭の写真を披露。しかし、中村カントクも負けてはいない。同じく、島田参謀長の坊主頭の写真を作ってきて披露したのだ。

 「勝手に作りやがって!」「お前こそ!」と醜い言い争い、掴み合いをする2人。そこへ、GMの「シャラップ!!」が炸裂! シュンとする2人。

 「今日の島田さんの提案も一理あります」と、珍しく島田の提案を快諾するGM。やはり、さっきのマチコ先生PRに気をよくしているのか?「対抗戦に勝ったほうが、最後を締める事にしましょう」と決断を下した。

 さあ、最後を締めるのは「3、2、1、ハッスル!ハッスル!」なのか? それとも、高田総統の「洗脳タイム」なのか!?


臼杵PRからの注意事項!

 まずは、PTA顔・臼杵PRによるハッスル観戦の注意事項が場内のモニターに映し出された。主だった内容は…

・ハッスル軍を思い切り応援しよう!

・モンスター軍には思い切りブーイングしよう!特に島田参謀長

・GM笹原は最近、人気が出てきて調子に乗っているので、勘違いしないように声援は抑え目に

・くれぐれも、Tバック姿で踊ったりしないように!

 こんなところ。では、「わくわくモンスターランド」の始まり始まり!